芸術書出版 アートワークス

有限会社 アートワークス


ご挨拶

2021年の活動再開にあたって

ここに再出発のご挨拶をさせていただくアートワークスの発足は2005年に遡ります。拙訳のスーザン・ウッドフォード著『絵画の見方』が、美術史入門クラスの教科書として一定の需要がありながら絶版になっていたので、岩波書店から権利を譲り受けて再編集し、ミュージアム図書を版元として刊行しました。その後は諸般の事情で休眠しておりましたが、ようやく活動再開の条件が整い、アートワークスが編集と刊行を共に手掛けた最初の本として、レンスラー・W・リー著『ウト・ピクトゥラ・ポエシス 詩は絵のごとく/絵は詩のごとく―人文主義絵画理論』をお届けできることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

大学で美術史を教えてきた私が自ら出版者となるに至ったのは、わが国における西洋美術史関係の書物の出版状況に問題を感じていたことによります。とりわけ翻訳書の場合、原著は気軽に買えるペーパーバックなのに、日本語になるとハードカバーで数千円、ときには箱入りで数万円になることも稀ではありません。しかも、訳文の正確さは価格に比例するとも言い切れないようです。そして、そもそも大手出版社は美術史の翻訳書の刊行にあまり積極的ではないようにも感じられます。

もちろん、それならオリジナルを読めばいいという考え方もあるわけで、私も特に大学院では英語の文献講読に力を入れたのですが、英語であっても原書を読みこなすことは現実にはなかなか難しいとわかりました。私自身も、本書の原書 UT PICTURA POESIS: The Humanistic Theory of Painting をかつて大学院の演習で読んだときには、イタリア語やラテン語の引用ばかりか、英語自体も空前絶後の難解さで苦労しました。それでも本書の重要性は理解でき、西洋美術史研究者の必読書であると確信したのです。自分で訳してみようかとも思ったのですが、私よりも遥かに適任である森田義之、篠塚二三男の両氏が1984年に発表された訳がありましたので、これ幸いとばかりにその改訂をお願いし、単行本化を企画しました。同じく幸いなことに、リーの薫陶を受けられた辻成史先生には師の思い出を寄稿していただき、大学院で本書の講読を指導していただいた高階秀爾先生からは「推薦文」を頂戴することができました。

大学院や学部の演習のテキストあるいは参考文献として気軽に使っていただけるよう、消費税込みでも2,000円でお釣りが来る価格設定にしてあります。一方で、訳文の正確さや読み易さは価格に反比例するよう、訳者・編集校閲者ともども十分に注意を払ったつもりです。とはいえ、人間のわざには誤りがつきものですから、難点を発見された場合には遠慮なくご指摘ください。

出版の現場での私自身の経験は、その昔、ある出版社で編集補助のアルバイトをした程度なのですが、著者・訳者として40年余り過ごしてきた間には、多くの編集者の方々の仕事から学ぶ機会もあり、また、今回の出版に際しても、長年の間に培われた出版関係の人的ネットワークに大いに助けられました。そのことを、感謝と共に記しておきたいと思います。

2021年11月

有)アートワークス
代表:高橋裕子