オックスフォード大学で長年美術史学を講じたフランシス・ハスケル(1928~2000)は、作者よりも受容者に注目した独自の研究によって、母国イギリスだけでなく欧米全域において、20世紀後半を代表する美術史家の一人として高い評価を得ていた。著書も8冊(うち2冊は没後出版)と、決して少なくない。しかし、わが国での紹介は著しく遅れ、本書『束の間の美術館』が初めての翻訳である。
著者の没後四半世紀を経てようやく日本の読者にアクセス可能となったハスケルの著作だが、絶筆である本書には著者の生涯の関心と研究成果が凝縮されており、読者は本書を通じて、ハスケルのユニークな仕事の特質全体を感知できるかもしれない。彼の生涯と著作を紹介する「訳者解説」も理解を助けるだろう。

